【量子力学】フラーレン分子の二重スリット実験から、観測問題の意識解釈は妥当か?

前の記事の続きです。

2重スリットから派生した実験は今まで様々な形で続けられているそうです。
その中で有名なのがフラーレン分子による二重スリット実験であり、実験結果では電子などと同じようにスリットを通ると奥側に分子衝突跡の干渉縞ができ、観測器で測定するとその干渉縞は消えるそうです。
つまり、フラーレンほどの大きい分子でも重ね合わせ原理による振舞いが見られるということです。
そこまでは良いものの、このことが何を意味するのかについて考える時、

フラーレンは高分子で、分子同士が相互作用をしたまま波動的な振舞いをした
 → よって、量子デコヒーレンス理論は否定される

という結論を出す人が出てくるようになってしまっています。
ここで問題なのがこのデコヒーレンス否定論は正しいのかということです。
まず、フラーレンなどの分子は電子や陽子などが常に結合のための相互作用していることは確かな事実です。
では、このときの結合作用は量子デコヒーレンスに適用できるのか?と考えると、本当にそうかと疑問に思うこともあり得るでしょう。
つまり、デコヒーレンスの相互作用は幾らか限定されたものである可能性もあるわけです。
スリットを通って波動性の振舞いをした分子が結合相互作用をしているからといって単純に量子デコヒーレンスが否定されると考えるのは早計だということです。

これにより、少なくともフラーレン分子のスリット実験での量子デコヒーレンス解釈否定論は成り立たないことがわかりました。

ということで、これで前に説明したシュレーディンガー猫問題が本当に解決した・・・わけでもないです。

量子デコヒーレンス - Wikipediaなどの説明によると、猫の生死などのマクロ存在の状態は、デコヒーレンスのみ100%完全に決定できるわけではないからです。
わずかな残りの原因として意識による観測、もしくは多世界解釈での世界分岐も関わる可能性も否定できないことになります。
結局のところ、現時点ではマクロ存在の状態収縮の本当の原因は謎に包まれたままです。
もっとも、ここで説明したフラーレン分子実験も含め、意識解釈の妥当性は現在はかなり低くなっていることは確かです。
ただ完全に否定できないだけで、デコヒーレンス説や多世界解釈などより妥当性は低いでしょう。
そもそも量子コンピュータなどで、外部の粒子による量子ビットのエラーが人間の意志と無関係に生じる現象がある時点で、
意識解釈はかなり不合理なものとなるとも言えます。

個人的には、波動関数の収縮は現在の科学からは未知な何かのメカニズムや作用があるだろうと考えています。
そう考えると、現在の科学はまだまだ未熟であり、それ故に量子力学観測問題など多くの謎が存在するのも無理はないとも思っています。